千尋は神乃木の広い胸にぴったりと寄り添って、静かに肩で息をしている。 そんな千尋の髪を優しく撫でながら、神乃木は耳元で甘く囁いた。 「やっぱり千尋は、感じやすいんだな……。あんなにこんなところじゃダメだって言っていたのに、しっかりイッちまったぜ」 「…………。荘龍の、意地悪……」 千尋はとろんとした目で神乃木を見上げて、神乃木の耳を軽く甘噛みする。 「だって、あんな風にめちゃくちゃにされたら、気持ちよくなっちゃうに決まってるのに……」 まだ何か言いたげな千尋の唇を、神乃木は軽いキスで塞いだ。そしてそのまま、頬や額にもキスを浴びせる。 千尋は目を閉じて、喉元を撫でられた猫のように満足そうに、されるがままになっている。 しばらくの間二人は何も言葉を交わすことなく、お互いの温もりを確かめあったまま、静かな余韻に浸り続けた。 そんな静寂を破ったのは、千尋の甘えるような声だった。 「ねえ、荘龍……」 「なんだ?」 「私はもう、充分気持ち良くしてもらったから……。だから今度は、私のほうから……ね?」 千尋が、ちょっと悪戯っぽい瞳で神乃木を見つめる。 「クッ……。積極的なコネコちゃん……キライじゃないぜ」 神乃木は千尋の頭をくしゃくしゃと撫で回して、その視線に応える。 しかし神乃木は、ベルトに伸ばされてきた千尋の手を軽く押しとどめ、首を横に振った。 「荘龍……?」 「極上の一杯は、落ち着いた場所でじっくり味わうのが一番だ。……続きは、後でゆっくりお願いするぜ」 千尋は小首をかしげて、神乃木の顔を見上げた。 「…………。ええと、その……。それで、大丈夫なの?」 少しきわどい質問に頬を赤らめて言葉を濁す千尋に、神乃木はいつもの余裕ある、ちょっと皮肉っぽい微笑みを返した。 「楽しみを後に取っておけないほど、がっついたガキじゃねえさ。その代わり……後のお楽しみでは、たっぷりとサービスしてもらうぜ」 片目をつぶってニヤリと笑う神乃木の言葉に、千尋がますます顔を赤くする。 神乃木はそんな千尋の反応を満足そうに眺めながら、空気を切り換えるように、千尋の頭をポンと軽く叩いた。 「さあ、そろそろ休憩は終わりだ。さっさと片付けちまおうぜ……心おきなく、続きを楽しみたいからな」 「……はい!」 千尋はまだ少し頬を赤くしたままだったが、元気良く返事をして、いつものてきぱきとした顔に戻る。 恋人たちの時間が終わった部屋の中には、またいつも通りの引き締まった空気が流れはじめた。 |