押し倒されたような格好になっていた私を楽な体勢にしてくれてから、もう一度、荘龍はさっきのようなキスをしてきた。 撫でられるように、くすぐられるように、かき回されるように……色々な方向から舌を巧みに動かされるたびに、今まで知らなかった感覚が身体を走る。 キスを通して、背中や胸や腰……そして、私の身体の一番奥のほうに、軽い電流のような熱いものが下りてくるみたいだった。 「ん…………んっ……、んんっ……」 無意識のうちに、そんな声を立てていた。自分のものだと思えないような声が恥ずかしくて止めようとしても、喉の奥から自然に漏れてきてしまう。 頬が熱くなるのを感じて訴えるような目で見上げる私の気持ちをくんでくれたのか、荘龍は、軽いキスを合図のようにして、私の身体をいったん解放した。 そして、いつもの皮肉そうな様子からは想像できないような優しい微笑みを浮かべ、あらためて私のことを強く抱きしめてくる。 「…………!」 お腹のあたりに何か違和感のようなものを感じて、私は反射的に身体を震わせた。はっきりとは分からないけど、自分の知らないものに本能が驚いたような感じだ。 固いものが当たっているんだと気づいた時、それが何なのかなんとなく分かって、私は身体をこわばらせた。 彼が私を欲しいと思っているなら当然のことだと頭では分かっていても、やっぱり怖かった。 今までのことでどんなに愛してくれているのかを知っていても、こういうことって、理屈じゃない。 「……大丈夫だ。オレに任せてくれ」 そんな私の戸惑いに気づいたらしい。荘龍は耳元で囁いて、私の髪を優しく撫でた。 囁く息が耳にかかって、くすぐったいような気持ち良さが身体を通り抜ける。それは、今のキスで初めて知った感覚によく似ていた。 同時に、さっきと同じ熱い鼓動がよみがえってくるのを感じる。 知らないことへの恐れが完全に消えたわけじゃなかったけれど、この人なら大丈夫だ……あらためてそう確信して、私はかすかにうなずいた。 「……いい子だ」 聞いているだけでドキドキするような甘い声でそう言って、荘龍は私のおでこにキスをして、そのまま安心させるように髪や背中を撫で続けた。こうしていると、なんだか本当の猫になって撫でられているような気分になってくる。 そうされていくうちに、私はだんだんと落ち着いていった。 荘龍はそのまま、私のスカーフやベルトを器用に外していく。 ……私と出会う前の人に妬いてもしょうがないけど、その手慣れた様子は、ちょっとだけ私を複雑な気持ちにさせた。 「……あっ。駄目ですよ、怪我してるのに!」 そんな小さなやきもちは、荘龍が、私の服だけじゃなくて自分の包帯まで取ってしまうのを見て、どこかへ飛んでいってしまった。 マグカップの切り傷も、熱いコーヒーの火傷も、たった半日で治るわけがない。 「大したケガじゃねえ。それに、こんな味気ねえ包帯より、千尋に触っているほうがよっぽど早く治るからな」 「……もう!」 相変わらず、こうと決めたらテコでも動かない。私の心配なんかどこ吹く風で、荘龍は、二人が身に付けている余計なものを取り払っていった。 |