Pledge:神乃木/5



 千尋が楽になるように体勢を整え直してから、オレは、もう一度アツいキスをプレゼントした。

 今度は、さっきの小手調べ程度のヤツじゃなくて、手加減なしだ。身体に種火を落とすように、オレは千尋をかき回していく。

 舌を絡ませてあちこちを撫で上げていったり、歯の裏のほうをつつくように弄んだり、軽く舌を吸ってやったり……オレがさまざまな刺激を与えるたびに、千尋はオレの腕の中で小刻みに身体を震わせた。

「ん…………」

 千尋の口から、甘い声がこぼれてくる。自分自身でも想像していない喘ぎに戸惑っているらしい様子が、さらにオレの征服欲をかき立てる。
 他の誰も知らない声をもっと聞きたくて、オレはさらに舌の動きを強めていった。

「んっ……、んんっ……」

 頬を上気させてますます切なく喘ぎながら、千尋は助けを求めるようにオレの目を見つめた。かすかに潤んだ瞳が、オレの手で今まで知らない快楽を与えられたことを物語っている。
 恐れと戸惑いの奥にひそむ、さらなる未知への期待……そんな初々しさが、とても愛しかった。

 オレはいったん、軽いキスを挨拶代わりにして腕をゆるめた。そしてあらためて、少しだけ乱れた可愛い顔をじっくりと眺めさせてもらう。
 愛しさがつのるままに、オレはもう一度千尋を固く抱きしめた。

「…………!」

 突然、千尋が身を震わせた。

 初めは自分でも何を恐れているのかわからないようだったが、密着した身体は固くこわばってゆき、瞳に恐怖の影が広がっていくのがはっきりと見て取れる。

 オレは千尋の不安をやわらげるために、注意深く恐れているものの正体を見極めようとした。

 しばらくして、腕を回している腰のあたりが一番緊張していることに気がつく。それで、千尋が何に驚いたのか察することができた。

 オレが千尋を求めていることで起こる、自然な身体の反応。
 千尋自身の反応も今初めて経験していることなら、オレの反応に触れることも、初めてなのが当然だった。

「……大丈夫だ。オレに任せてくれ」

 オレは、千尋の緊張をほぐすように髪をそっと撫でながら、耳元で囁いた。
 未知への本能的な畏れを解くためには、オレが千尋をどれだけ愛しているかということを、全身で伝えていくしかない。

 オレは、怯えているコネコを落ち着かせるように、千尋を優しく抱きしめた。

 しばらくそうしているうちに、千尋の身体は少しづつ固さを解いてゆき、オレの目を見つめてかすかにうなずいた。
 その瞳から恐れの影は完全に消えてはいなかったが、オレを信じて全てを任せようとしているのが見てとれる。

「……いい子だ」

 オレはご褒美に額へ軽くキスしてやって、そのまま髪や背中を撫で続けた。千尋はだんだん落ち着いてきて、オレにしっかりと身をあずけてくる。


 オレはそのまま、千尋の身体を隠しているものを一つづつ外していった。邪魔なものはさっさと取り払って、一刻も早く千尋の全てを見たい……初めてオンナを抱くガキのようにはやる心をおさえながら、ていねいにスカーフやベルトを外していく。
 千尋は、恥じらいを抑えているかのように少し固い顔をしていたが、大人しくされるがままになっている。

「……あっ。駄目ですよ、怪我してるのに!」

 オレが右手の包帯を外すのを見て、千尋が慌てたような声を上げる。世話焼きの千尋らしく、こんな軽い怪我でも心配でしょうがないようだ。

「大したケガじゃねえ。それに、こんな味気ねえ包帯より、千尋に触っているほうがよっぽど早く治るからな」

 オレが至極当然の主張をすると、千尋はいつものように、異議をとなえたくてしょうがないが却下されるのも分かっている……とはっきり書いてある顔で、小さなため息をついた。

「……もう!」

 なんと言われようと、千尋の全てに直接触れたい気持ちは変わらない。オレはそのまま、二人を隔てる余計なものを取っ払い続けた。


神乃木4 / 神乃木5 / 神乃木6
千尋4 / 千尋5 / 千尋6

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