Pledge:千尋/8



 そこに荘龍の指先で軽く触れられただけで、今までよりもずっと強烈な感覚が身体の奥を走った。

「あ……はぁ、あっ……!」

 少しづつ押し開いていくように優しく撫で回されるだけで、あられもない声がのどの奥から漏れてきてしまう。
 強烈すぎる刺激に、私はたまらず腰を引いて逃げようとした。でも、いつの間にか荘龍は私の腰をしっかり抱きしめていて、逃げようにも身動きがとれなかった。

「だ、ダメです……!」

 これ以上気持ち良くなったら、本当にどうなってしまうかわからない。
 それに、自分でも今、そこがどうなっているか何となくわかっていた……それ以上奥まで触られたら、荘龍にもそれがわかってしまう!

「ダメ、じゃねえ」

 荘龍は容赦なく、私が動けないように強く抱きしめたまま、ゆっくりと指を左右にかき回し、割って入ってくる。

「はぁん……っ! あ……くふぅ……んっ!」

 乱れた声を、おさえることができない。
 そして指を動かされるたびに、身体の奥から熱いものが隠しようもないほどにあふれてくる。

「ほら、こんなになってるぞ……すっかり下着まで濡れちまって。きっと千尋は、元々こういうことが好きなんだな」

 もう充分死ぬほど恥ずかしいのに、荘龍は言葉でも私をかき乱そうとしてくる。

 初めてでこんなになっている自分は、もしかしたらとんでもなくみだらな女なんじゃないか……心のどこかで否定できないと思いながら、私は懸命に自分の理性を引き戻そうとした。

「あぁ……ち、違います、私、本当に初めてで、わからなくて……。なんだかもう、私の身体じゃないみたい……あっ!」

 荘龍が私の言葉をさえぎって下着の中に手を入れてきて、また思わず声をあげてしまう。

「ウソは感心しねえな……これは間違いなく、千尋の身体だ。今、感じているんだろう? こんなになるぐらいにな……」

 荘龍は、指で私の身体の奥をかき回してくる。
 指が動くたびに、くちゅ、くちゅ……と、聞いているだけで変な気分になるような音がする。それは間違いなく、私の身体からあふれている、いやらしいものがたてている音だった。

「ひぁ……っ、あぁ、そんなこと……!」

 撫で回されるたびに気持ち良くて、わけがわからなくなりそうで、身体からはどんどん熱いものがあふれてきていて……。
 本当は自分でもどうなっているのかわかっているのに、最後の理性がどうにか自分をつなぎとめようとして、力のない否定の言葉を口走らせる。

「感じてないなら、これは何だ?」
「あっ!」

 荘龍は、手を引き抜いて、また胸の先をつっ……と撫でてくる。
 その指には熱いものがまとわりついたままで、それがいっそういやらしい刺激を感じさせ、また思わず声をあげてしまった。

 私はもう混乱して、ただぼうっと荘龍の顔を見上げるしかなかった。
 と、荘龍はふと優しい顔になって、広い胸で包むように私を抱きしめてきた。

「……大丈夫だ、千尋。オレたちは今、気持ち良くなることをしているんだ……いくら感じても、淫らになってもいいんだぜ」
「…………!」

 私のまだこんがらがった頭に、荘龍の言葉がすっと入ってくるような気がした。

「オレは、さっき泣いていた千尋も、そこから立ち上がってきた強い千尋も、今こんなにいやらしく乱れている千尋も……全部、愛してるんだからな」
「…………。荘龍……」

 荘龍の言葉が、私を安心で包んでいった。
 急に気持ちが楽になりすぎて、涙が出そうになるほどだった。

 約束を守るために目を閉じながら、私は荘龍の言葉を胸の中で繰り返し、彼にぴったりと寄り添って、安らぎに身を任せる。
 そう。私が荘龍のすべてを受け入れたいと思っているのと同じように、荘龍も、私のすべてを受け入れてくれている。

 この人の前では、泣いていようが、乱れていようが、甘えていようが……どんな自分でも、さらけだしたって構わない。
 そう思うと、心も身体も軽くなっていった。

「じゃあ、もっとアツくなってもらうぜ。いいな?」

 私の気持ちが伝わったのか、荘龍は耳元でそう囁いた。小さくうなずくと、荘龍は私が身に着けている最後の一枚に手をかける。
 まだ少し恥ずかしかったけど、荘龍に私のすべてを見てもらうために、私はそのままじっとしていた。


 生まれたままの姿になった私を、荘龍はじっと見つめている。

「…………キレイだ」

 たった一言だったけど、その言葉からは、どんなに言葉をつくしても語りきれない色々な思いが感じられた。

 愛する人が、魅せられたように私を見つめている。そう思うと、少しずつ気持ちが大胆になっていった。
 私がさっきまで荘龍に触れられてめちゃくちゃに乱れていたのと同じように、荘龍も私を見て心をかき乱されている……それがはっきりと伝わってくる、熱い視線が心地良かった。

 荘龍は私をしばらく見つめ続けた後、私の頭からすっぽりとシーツをかぶせてきた。
 衣擦れの音がしているから、たぶん服を脱いでいるんだろうな……などと思っていたのもつかの間、荘龍も私と同じ生まれたままの姿で、シーツの中に入ってきた。


神乃木7 / 神乃木8 / 神乃木9
千尋7 / 千尋8 / 千尋9

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