ほんの少し触れただけで、そこはもうじゅうぶんに熱くなっていることがよくわかった。思わずそのまま強く押し入っていきたい衝動にかられたが、痛みや恐れを感じさせないように、極力優しいタッチで指を滑らせてゆく。 「あ……はぁ、あっ……!」 布一枚を隔てて軽く撫で回すだけで、千尋は悲鳴のような声をあげる。喘ぐたびに身をよじって逃げようとするが、オレが先読みしてしっかりと腰に腕を回しておいたので、そうは問屋がおろさない。 「だ、ダメです……!」 千尋はそう言って、哀願するようにオレの目を見つめた。 しかしとろんと潤んだ瞳はその言葉とは裏腹に、千尋の身体が本当に望んでいることを物語っている。 「ダメ、じゃねえ」 オレは逃げられないように千尋をきつく抱きしめたまま、奥のほうに分け入った指をそっとかき回してやった。 「はぁん……っ! あ……くふぅ……んっ!」 ほんの数回撫でてやっただけで、オレの指にはじんわりと蜜がからみついてきた。 オレは、頼りない下着一枚ぐらいではもう隠せないほどに熱くなっている千尋の身体を責めつづける。 「ほら、こんなになってるぞ……すっかり下着まで濡れちまって。きっと千尋は、元々こういうことが好きなんだな」 「あぁ……ち、違います、私、本当に初めてで、わからなくて……」 うわごとのようにつぶやく千尋は、何とか自分はいやらしい女ではないという言い訳を探しているようだった。 「なんだかもう、私の身体じゃないみたい……あっ!」 オレは千尋の言葉をさえぎって、下着の中に手を滑り込ませた。 そこの入り口はすでに、外まで溢れていた熱い蜜で満たされている。 「ウソは感心しねえな……これは間違いなく、千尋の身体だ。今、感じているんだろう? こんなになるぐらいにな……」 千尋に自分の乱れっぷりを思い知らせるため、オレはわざと音がするように強く指をうごめかせた。 くちゅ、くちゅ……と、絡み合った蜜がいやらしい音をたてる。 「ひぁ……っ、あぁ、そんなこと……!」 「感じてないなら、これは何だ?」 オレはいったん手を引き抜いて、まだ熱い蜜のまとわりついた指で、固く尖ったままになっている胸の先をなぞった。 「あっ!」 予想していなかったところを急にまた攻められて、千尋は快感と驚きが混じったような声をあげる。 今初めて知った強烈な感覚に翻弄されてどうしていいかわからない……そんな様子の千尋をもう一度包むように抱きしめて、オレは耳元で囁いた。 「……大丈夫だ、千尋。オレたちは今、気持ち良くなることをしているんだ……いくら感じても、淫らになってもいいんだぜ」 「…………!」 千尋は、飼い主に叱られると思っていたらアタマを撫でてもらえたコネコのように、きょとんと目を丸くしてオレを見上げた。 「オレは、さっき泣いていた千尋も、そこから立ち上がってきた強い千尋も、今こんなにいやらしく乱れている千尋も……全部、愛してるんだからな」 「…………。荘龍……」 オレの言葉を聞いて、千尋は目を閉じてオレの首筋に腕を回し、身体をぴったりとくっつけるように抱きついてきた。 千尋の火照った身体が、さっきまでよりも柔らかく感じられる。触れている全身から安心してオレに身をゆだねているのが伝わってきて、より一層の愛しさがつのった。 「じゃあ、もっとアツくなってもらうぜ。いいな?」 千尋は、少し照れたようにうなずいた。 オレが千尋の身体を覆っている最後の一枚に手をかけると、恥じらいの表情を見せながらも、おとなしくされるがままになっている。 あらためてオレは、一糸まとわぬ姿となった千尋をまじまじと見つめた。 「…………キレイだ」 他に、言葉が出てこなかった。 薄明かりの下、ほんのりと色づいた白い肌が浮かび上がっている。 清らかさを残しながらも、今まさにあでやかに花開きつつある身体は、この世にあるどんなものよりも美しかった。 目を離せずに見つめつづけるオレの視線を、千尋は頬を染めながらも堂々と受け止めている。恥じらうだけだったさっきまでとは違って、自信を持って男を誘うオンナの色香が、瞳の中にかすかに漂っていた。 見つめるだけではなく、直に触れ、全身で愛するために。 千尋にシーツを被せてカッコつかない姿 −−野郎が服を脱ぐさまほどマヌケなものも無い−− を見なくてすむようにしてから、オレも全てを脱ぎ捨て、千尋の隣に潜り込んでいった。 |