Pledge:千尋/9



 私たちは、何度も抱き合い、何度もキスを交わし……今初めて、お互いの全てを確かめあった。
 触れあっている肌からは、何も言わなくても気持ちが伝わりあうような気がした。

「千尋……」

 荘龍が、優しく私の頬に触れた。そのまま私の髪を撫でながら、荘龍はずっと私を愛おしそうに見つめている。

「荘龍……いいの?」

 私は思いっきり甘えたまま、荘龍に問いかけた。

「何がだ?」

 荘龍は猫を可愛がるように私を撫でたまま、聞き返してくる。

「さっきから、私だけ気持ち良くなっているみたいだから……」

 それだけ言って、私は言葉に詰まってしまった。
 私も荘龍を気持ち良くさせたい……伝えたい望みは、たったこれだけのシンプルなものだった。
 でも、一歩間違えるととんでもなくはしたない女に思われてしまいそうで、うまい言葉が見つからない。

「あっ……」

 急に耳たぶにキスをされ、思わず声をあげてしまう。荘龍はそのまま、甘い声で囁いてきた。

「大丈夫だ。千尋が気持ち良くなると、オレも気持ち良くなるんだぜ」

 それだけ言って、荘龍は私の手をとった。そして、その手を下のほうまで導いてくる。

「…………!」

 私の手に、何か熱いものが触れた。突然のことで驚いて手を引っ込めそうになったけど、荘龍はしっかりと私の手を握って離さない。

「さっきまで乱れていた千尋があんまり可愛くて、見ているだけでこんなになっちまったんだからな……」

 その言葉で、私が今何に触れているのかがわかった。思わず、恥ずかしさに鼓動が早くなってくるのを感じる。

 固く、熱く、真っ直ぐに私のほうを向いているもの。

 私の指が触れたとき、それがかすかに脈打つのを感じた。
 さっき私が身体の奥を触られてあれだけ乱れてしまったように、荘龍もここに触られたら平気なままではいられない……そう思うと、恥ずかしさよりも大きな好奇心が広がってきた。

 私は、おそるおそる手を上のほうまで伸ばしていった。

「あ……濡れてる?」

 溝のようなものを通り越して一番先まで触れた瞬間、思わず私はつぶやいた。
 熱く固くそそり立ったその先端は、私みたいに溢れるほどではなかったけど、確かにわずかな湿り気を帯びている。

 言ってしまってから、私はなんだかとっても恥ずかしいことを言ってしまったような気になって、顔が熱くなってくるのを感じた。
 荘龍は、そんな私の頭を嬉しそうにくしゃくしゃと撫で回す。

「ああ。でなきゃ、こんなに濡れちまってる千尋に対して失礼だろ?」
「はんっ、あぁっ……!」

 また、荘龍の手が私の奥深くに伸びてきた。さっきまで熱く溢れていた熱いものはまだまだ止まらず、荘龍の指と私の身体の間にからみつき、いやらしい音を立てる。

「気持ち良くなるとこうなるのは、オトコもオンナも変わらないんだぜ……」

 身体の奥は、こころなしかさっきまでよりも敏感になっているような気がした。
 止めようもなく甘い声が漏れてくるなか、私は何とか言葉を返す。

「はあっ……じゃ、じゃあ、触ったら気持ちいいのも、んっ……い、一緒なの……?」
「ああ……なんなら、試してみるか?」

 荘龍はいったん手を止めて、冗談とも本気ともつかないような調子で私の顔を覗き込んだ。
 一瞬迷ったけど、淫らな女だと思われたくない理性より、今までさんざん乱れさせられたお返しをしてみたい悪戯な気分のほうが打ち勝った。
 私は荘龍の目を見て、ゆっくりとうなずいた。

「……じゃあ、そうしてもらおうか」

 気のせいか、さっきまであれほど余裕たっぷりに私をいじくり回していたはずの荘龍が、年下の男の子みたいに可愛く見える。
 荘龍も、私と同じようにドキドキしながら自分をさらけ出しているんだ……そう思うと、なんだかとても気が楽になってきた。

「ねえ……どうすればいい?」

 とは言っても、初めてのことだから、どうすればいいのかわからない。
 なんとなく聞きかじりで、舌や胸でいろいろする方法があるのは知っていたけど、大胆に迫ってみてやり方を間違えていたりしたら、私は恥ずかしいし荘龍も引いてしまう。

 だから無難にリクエストを取ってみようとしたのだけど、荘龍は首を横に振った。

「千尋のしたいようにしてくれ。それが、一番いい」

 正直、その『したいように』する方法がわからなくて困っていたから、この答えは厄介なものだった。

 結局私は、さっきまで伸ばしていた手をそのまま滑らせていくことにした。

「クッ……!」

 どこを触ると一番気持ちいいのかわからないままあちこちに指を這わせていくうち、触れているものが一瞬ビクッと震えて、荘龍はかすかに息を呑んだ。

「……気持ちいい?」

 気持ちいいところを見つけられたのか、うっかり痛いところに触れてしまったのか……期待と不安で胸を高鳴らせている私に、荘龍は頭を強く抱き寄せ、耳元に唇を寄せてきた。

「ああ……。たぶん、これぐらい気持ちいいはず、だぜ……」
「あぁ……っ!」

 荘龍は答えながら、私の奥にあった指をつっと撫で上げて、前のほうにあるふくらんだものに触れてきた。
 その途端、今までと比べ物にならないほどの強烈な感覚が私の中を走り抜けた!

「はぁん……っ、あぁっ!」

 熱いものでたっぷりと濡らされながらそこを押さえられるたび、痛いほどの快感が襲いかかってくる。どうにもならないほど身体が熱くなって、自分でも意識せずに身体が動いてしまう。
 荘龍は、そんな私を容赦なく責め続ける。

「だ、ダメ……、これ以上気持ち良くなったら、どうなるかわからない……ふぅん……くっ!」
「大丈夫だ、千尋……もっと、感じていいんだぜ。オレも同じなんだからな……」

 気持ち良すぎてすっかりお留守になっていた私の手を、荘龍はもう一度自分のところに導いた。
 さっきまでよりもずっと熱くなっているものを、私は夢中で撫でさすった。

「……クッ! そうだ……オレも、気持ち良くてどうにかなりそう、だぜ……」
「ああ、私も……私もよ、荘龍……んっ……」

 気持ち良くなりすぎた時には思わず手を止めてしまいながらだったけど、私は必死で荘龍を気持ち良くさせようと、指や掌をあちこちに滑らせていった。荘龍も同じように、時々こらえるように息を詰めながら、私の気持ちいいところを激しく撫で回してくる。

 お互いの肌を通じて、私たちはただ一つの同じ望みを感じている……それが伝わってきた瞬間、荘龍は、私の耳元で熱く囁いた。

「千尋……お前と、一つになりたい」

 抱き寄せてきた胸に身体をあずけて、私たちはキスを交わし、同じ望みがあふれている目で互いに見つめ合う。

 私は、その目を離さないまま、ゆっくりと頷いた。


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